Close

CONTACT

トリサカナTORI×SAKANA

閉店に寄せて
2025.03.03

かなり間が空いてしまいましたが、三回目にして最後のブログとなります。

前回、過去に経験したとんでもないバイトの体験談を書いたところ思わぬ反響があり、最近までこのブログをみてご来店頂くお客様もいらっしゃるなどありがたい反面、こんな事ならもう少し真面目に書いておけばよかったと反省も致しております。

そこで今回は最後ということもあり、少し真面目に閉店の経緯について書いてみたいと思います。

改めましてこの度、2025年の3月1日をもちまして中華そばTORI×SAKANAを閉店しました。

正直、閉店の告知の後はこれで少し楽になれるという感情の方が大きかったのですが、多くのお客様からお言葉を頂くうちにトリサカナはただのラーメン店ではなく、多くのお客様にとってコミュニティの場でもあった事を改めて気付かされ、最終日の営業後はどっと寂しさが込み上げてきました。

思えば、他県から米子に転居してきて知り合いもろくにいない状態で現在のトリサカナを始めたのですが、最初に現在の場所で始めようとした時、相談した全員の方から「こんな場所で商売なんかしても失敗するだけだからやめておけ」と言われたのも今となってはいい思い出です。
資金もなかった為、内装も知り合いの方と二人でほぼDIYで作り上げました。

こうして2019年の3月1日にいよいよオープンの日を迎えたのですが、SNSでの告知もせず、せいぜいやった事といえば近隣への手書きチラシを配るくらいの事だった事もあり、「お客様ゼロだったらどうしよう」とこれまでの人生で感じたことがないほど不安だったのを覚えています。

ただ結果、初日はたくさんのお客様にご来店頂き、その心配も杞憂に終わりました。

その後も少しの間はいわゆる開店バブルでそれなりにご来店があったのですが、その後はやはり徐々に落ちていき、少ない日にはご来店数が二人という日もありました。

その日の事は今でもはっきり覚えています。
オープンから約三時間来店数がゼロで、その後お一人ご年配の男性が来られたのですが、それからまたしばらくご来店がなく、やっと閉店間際になぜか上半身裸で息を切らした男性が入ってきて「これで何か食べさせてくれ」と三百円机に置かれ仕方なく中華そばを出したのですが、一口食べて「もういい」と帰られました。

その営業後、余った大量のスープを捨てている時にはっきり心の折れる音というのを感じたのを記憶しています。

その後も決して順調とは言えませんでしたが、それでも少しずつ常連様も増えてきて、初めて行列ができたのをみた時は、これまでの事が少し報われた気がしてとても嬉しかったです。

しかし喜びも束の間、それから間も無いオープンからちょうど一年経った三月頃にあのコロナショックがやってきました。
当店は米子市の繁華街という立地もあり、当時まだ未知の殺人ウイルス扱いだったコロナの影響を覿面にうけました。

街からは人が消え、夜の街を歩いているだけでも後ろ指を指されるという今考えれば異常ともいえる状況の中、当然当店も営業どころではなくなりました。

当初は閉店も真剣に考えましたが、どうせ駄目なら最後に何か残したいと考えた結果、「鳥取、島根山陰両県に一食からでも配達料無料でデリバリー」という取り組みを始めてみました。

無謀ともいえる取り組みでしたが、いざ始めてみるとメディアに取り上げて頂いた事などもあり、東は鳥取県智頭町、西は島根県浜田市まで多くのお客様からご注文を頂きました。
正直、交通費も含めるとあまり利益にはなりませんでしたが、それでもこのデリバリーをきっかけに当店を知って頂いたお客様方が最後まで遠方から通ってくださった事などからもやってよかったと思っています。

その後もスーパーでの店頭販売や通販の開始など様々な事に取り組みましたが、想定していた以上にコロナが長引いた為、非常に厳しい時期が続きました。

それから数年経ってようやくコロナも落ち着き、通常の営業に戻りつつあったのですが、その状況は明らかにコロナ前と違っていました。
特に深夜帯のお客様が激減しており、以前の様な賑わいはほとんどなくなっていました。

そこで再度何か新しい取り組みができないかと考えた時に頭に浮かんだのが四川麻婆豆腐でした。

当店の様な不便な立地にわざわざ足を運んで頂くには中毒性の高い料理でなければいけない、米子には四川料理店がほとんどない、元々若い頃に中国料理店で修行していた事などの理由から、思い切って四川麻婆豆腐の専門店を始める事にしました。
当初は週一回の限定で実験的に始め、お客様のご意見を伺いながら味を改良するという作業を繰り返し、2023年の一月に四川麻婆豆腐 麻麻(現在の麻麻麺菜店)として正式にオープンしました。

そこからこの二年は月曜から木曜は麻麻、金曜土曜の夜はトリサカナという両輪で営業して参りましたが、両方の仕込みなどを一人で全てやるというのは体力的にも時間的にもかなりの負担で、年々トリサカナの深夜営業の際、体力的にきついと感じる事が多くなり、今回この様な決断をさせて頂きました。
これがこの度閉店に至った理由です。

お陰様で麻麻麺菜店の方も常連様が増えてきて忙しくさせて頂いておりますが、トリサカナを閉店してこのブログ書いてる今、あまり感じたことのない気持ちが胸に去来しています。

あれほどコロナの影響で大変な目にばかりあい、身体的にもキツいことだらけだったトリサカナですが、今頭に浮かんでくるのは、バカ話で盛り上がるお客様、米子で自分の味が受け入れられるかと不安な僕に美味しいから自信を持てと声をかけてくれたお客様、結婚前から通って下さったご家族連れ、駅伝大会で入賞したとわざわざ報告に来てくれる学生さんなど思い出すのは楽しそうなお客様の姿ばかりです。

僕が大好きな言葉で、かのボクシングヘビー級チャンピオン、モハメドアリの世界一短い詩と言われる「Me.we(私、私達)」というものがあります。
「皆がいるから自分が存在している」という意味で解釈されていますが、今の自分の心情にこれほど適した言葉はありません。

トリサカナは僕がオープンさせて、お客様のお力で育てて頂いた。
まさにWeの店だったと心から思います。

6年間本当にありがとうございました。

中華そばTORI×SAKANA店主 
吉川典史

SOTA FURUYAMA

TEL. 0859-57-1054
鳥取県米子市角盤町3丁目84-3

営業時間
毎週木曜日~土曜日 19:00~2:00



Copyright c TORI×SAKANA.
All Rights Reserved.

中華そば TORI×SAKANA 中華そば TORI×SAKANA
中華そば TORI×SAKANA 中華そば TORI×SAKANA